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「六大流派」事件から原作品の著作権を尊重する必要性 シリーズ1:「文学作品」から「ゲーム作品」への翻案を慎む
Tue Feb 02 09:59:00 CST 2016 発表者:华诚小編

「六大流派」事件から原作品の著作権を尊重する必要性 シリーズ1:「文学作品」から「ゲーム作品」への翻案を慎む

概要

文学作品の登場人物名、登場人物の関係等『著作権法』では保護されないと思われる要素に対しても、重視しなければならない。これらの要素は特定の設定ではないものの、文学作品における関連のある物語の展開と結びついた場合、独立しているように見える要素は『著作権法』により同様に保護を受けるものとなる。

 

事件の背景:

金庸氏は華人侠客小説家の「泰山北斗(第一人者)」とされており、『射鵰英雄伝』、『神鵰侠侶』、『倚天屠龍記』、『笑傲江湖』(以下「4作品」という)等多くの人気侠客小説を著している。

2013年4月、金庸氏は中国で前記4作品のモバイル端末用ゲームソフトの独占的翻案権を中国の某有名ゲーム会社(以下「A社」という)に許諾した。
2014年5月、A社は、中国の某ゲーム会社(以下「B社」という)が許可を得ずに、「六大流派」と題する侠客種類のモバイル端末用ゲームを開発していることを発見した。当該ゲームは4作品の登場人物名、登場人物の関係、武芸技の名称、武芸の奥義書、物語の展開等の内容を大量に使用しており、A社単独の翻案
権を侵害している疑いがある。そのため、A社は発見次第、B社に「侵害停止警告書」を送付し、侵害行為の停止を要求したものの、B社は警告書の受領後も侵害行為を停止しないだけでなく、ゲームの登場人物名の軽微な変更を数多く行い、2014年8月下旬より同社の公式サイト及びその他のオンラインゲーム配布プラットフォームでアンドロイド端末用ダウンロード及びゲームサービスを一般公衆に向けに提供し始めた。

これに対して、A社は訴状を裁判所に提出し、B社を訴えたのである。


本件の難題:

本件は「文学作品」から「ゲーム作品」への翻案であり、両者は表現形式、それら自体の特徴等多くの面ではっきりと異なっている。ゲーム自体は「動的な画面をメインとし、画面の切り替えが速く、文字表現は少ない」等の特徴があるため、侠客をテーマとするゲームで最も多く使用されるのは登場人物名、登場人物の関係、武芸技の名称、武芸の奥義書等の要素である。一方、ゲームの物語の展開は、往々にして切り取った部分のみ、話の筋のみがゲームの中に出てくるようになる。

そのため、「六大流派」の4作品に対して著作権侵害を構成するか否かの鍵で、まず4作品の登場人物名、登場人物の関係、武芸技の名称、武芸の奥義書、それぞれの物語の展開等の要素が『著作権法』により保護されるか否かを確定することが前提となる。


分析:

筆者は、小説には人物、展開、環境の3要素があると考える。この3要素が小説の完全な構造の作成に貢献し、3つの要素間の差異により、それぞれの小説は他の小説と異なる個性のある内容になる。そのため、4作品における登場人物名、登場人物の関係、武芸技の名称、武芸の奥義書、物語の展開等は『著作権法』により保護されるべきである。B社は許可を得ずに、「六大流派」で係争作品の独創的表現形式を大量に使用し、著作権侵害を構成した。その理由は以下の通りである。

翻案権とは、作品を改変し、独創的で、新しい作品を創作する権利をいう。本件において、コンピュータ・ソフトウェア作品としての「六大流派」は係争作品の翻案を構成するか否かを判断する鍵となる要点は、ゲームで使用されている登場人物名、登場人物の関係、物語の展開等が文学作品と実質的に類似性があるかどうかである。
まず、「六大流派」は金庸氏の作品の人物設定を数多く使用している。登場人物名では、岳不群、令狐冲等、金庸氏の作品での各流派の主役や脇役の人物名を使用している。各流派での登場人物の関係では、峨嵋派の滅絶師太と紀暁芙、丁敏君等の師弟関係、滅絶師太と楊逍の対立関係は係争作品と全く同一である。登場人物のイメージでは、「六大流派」の「令狐冲は酒好き」、「女好きの田伯光は堂々としている」、「丁敏君は性格がよくない」等の登場人物の性格も金庸氏の作品と全く一致している。

次に、「六大流派」は係争作品の物語の展開の独創的表現形式を使用している。物語の展開から見ると、「六大流派」の大まかなストーリーは金庸氏作品の真髄を全般的に利用し、各流派の登場人物の名称、関係、性格、武芸等多くの素材と合わせて繋がっている。例えば、「海沙派は海東青の屠龍刀を奪う」、「令狐冲は田伯光と回雁楼で座ったままで戦う」、「福威鏢局林総鏢頭は『辟邪剣譜』のため青城派に家族全員が殺された」等の話は全て金庸氏の作品にある。これらの内容は金庸氏の作品の物語と全く一致するだけではなく、これらの話の筋は全て金庸氏の作品の結びつきの優れた部分である。

さらに、「六大流派」は係争作品のその他の独創的表現形式を使用している。「六大流派」に登場する武芸及び武芸の奥義書、例えば、独孤九剣、紫霞神功、九陰白骨爪等の武芸、及び『九陰真経』、『辟邪剣譜』等武芸の奥義書は全て金庸氏の作品にある。そして、これらの内容に関連する人物は係争4作品と一致している。

そして、「六大流派」は、表現技法でも係争作品の表現形式との類似性が強い。「六大流派」は係争作品と全く一致する会話、脇台詞を大量に使用している。例えば、「倚天が出なければ誰が敵側になるのか」、「余のちび、木のせむしは、二人ともわが林氏族の『辟邪剣譜』を奪いたがって」等、全て金庸氏の原著作品にある。

これらを総合的に検討した結果、裁判所は最終的に、「六大流派」は金庸氏の係争作品の著作権を侵害したと認定するとともに、B社が許可を得ずに無断で係争作品をゲームに翻案することは、A社の享有している単独のゲーム翻案権、及び翻案後のゲームの運営権益を侵害したと認定したのである。


結論

以上を踏まえると、文学作品における登場人物名、登場人物の関係等の『著作権法』により保護されないように見える要素に対しても、重視すべきである。これらの要素の設定に十分な具体性があり、尚且つ文学作品としての物語の展開と交錯した場合、独立しているように見える要素は『著作権法』により同様に保護されるものとなる。ゲーム業者は文学作品をゲームに翻案する場合、権利者の著作権を尊重すべきであり、勝手な翻案は慎まなければならない。


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